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東京高等裁判所 昭和25年(行ナ)21号 判決

原告 東宝株式会社

訴訟代理人 加嶋五郎 外二名

被告 公正取引委員会

訴訟代理人 入江一郎 外三名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一原告の請求の趣旨及び請求の原因。

原告は、「被告が原告に対する昭和二十五年(判)第十号事件につき、昭和二十五年九月二十九日になした審決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、請求の原因として次のように述べた。

一、被告は昭和二十五年九月二十九日原告を被審人とする昭和二十五年(判)第十号事件について、別紙審決書写のとおり審決し、その主文において「一、被審人はスバル興業株式会社との間の昭和二十五年一月二十六日附「劇場共同経営に関する契約案」に基き、東京都千代田区有楽町一丁目五番地所在スバル座及びオリオン座の二劇場を賃借してはならない。二、被審人は、本審決後直接たると間接たるとを問わずスバル座及びオリオン座の経営に関与してはならない。三、被審人は、将来如何なる方法をもつてするを問わず、第一項の賃借と同様の効果を生ずる行為をしてはならない」と命じた。

二、審決の基礎となつた原告と、訴外スバル興業株式会社(以下単にスバル興行という)間の昭和二十五年一月二十六日附劇場共同経営に関する契約案(別紙審決書写末尾添付)は、次のような経過によつて成立したものである。

(一)スバル興業は、昭和二十一年二月創立され、アメリカ映画上映館の経営を業とする会社であるが、レクリェーション事業の経営及び不動産売買等を兼営するようになり、これら未稼動資産に投じた資金が相当巨額に達したため、金融難に陷り、借入金約五千万円及び入場税の滞納額四千万円を超え、東京都より同会社所有のスバル座及びオリオン座の二館を差押えられ、その公売処分の通知を受けるに至つたので同業者である原告に援助を求めてきた。

(二)そこで原告は、スバル座及びオリオン座をスバル興業の映画館として存続せしめることが、有楽町を映画興業の中心とする原告の興行政策にとつても利益である、即ち新興映画館として好評を博していたスバル、オリオンの二劇場を失うこととなれば、それだけ有楽町を中心とする映画興業景気はさびれるであろうし、これに伴い原告の直営映画館のためにも不利益な結果となるを免れないと考え、スバル興業の申出に応ずることにした。

(三)即ち原告は、スバル興業に金三千万円を貸付けることとし、昭和二十四年十二月二十日劇場共同経営に関する契約を締結し、ついで昭和二十五年一月二十六日右契約の一部を変更して、本件の劇場共同経営に関する契約となつたのである。

三、右の契約につき審決において認定された事実のうち、原告は次の諸点について争うものである。

(一)本件契約は営業の賃借ではない。

原告とスバル興業間の本件契約は、映画界全般の利益のためにスバル興業の企業の維持をはかり、もつて同会社を援助するために締結したいわば援助契約とも称すべきもので、スバル興業の独立性を尊重しながら、融資の回収を確実にしようとする契約であつて、被告の認定したような営業の賃借契約ではない。

(二)丸の内、有楽町界隈又はこれを含む審決認定の銀座地区は、一定の取引分野ではない。

被告は第一次的に丸の内、有楽町界隈を、第二次的に銀座を中心とする東京都興行組合銀座支部管轄区域(以下銀座地域と略称する)から新橋演舞場、三越劇場、白木劇場及び人形町松竹映画劇場を除外した地域を、映画興行の一定の取引分野と認定し、かつ歌舞伎座及び明治座をこの地域内の劇場に算入していないが、原告はこの認定を争う。

(1) 丸の内、有楽町界隈は、(イ)その地区の映画館に上映される映画がいわゆる封切映画であり、(ロ)都内の中心的地区で交通が便利であり、(ハ)かつ繁華街銀座通が近くにあるので、観客は都内及び近郊一円より参集する。もし地域の点から「一定の取引分野」を構想すべきものとすれば、旧東京市内がほぼこれにあたるであろう。

(2) 映画興行の一定の取引分野は、地域によるよりも、むしろ本質的には、外国映画と日本映画というように、質的に把握すべきものであつて、外国映画、日本映画につき、それぞれの取引分野が成り立つものと考える。外国映画の上映によつて有名になつたスバル、オリオン両座については、外国映画の有する質的に異る広い分野で判断すべきである。

(3) 仮に旧東京市内が一定の取引分野として広きに過ぎるとしても、少くとも東京都興行組合銀座支部管轄区域全部を一定の取引分野と認むべきものであつて、(イ)被告がその地域から新橋演舞場、白木劇場、三越劇場、及び人形町松竹映画劇場を除外したのは不当である。被告が一方において、一定の取引分野を興行組合の管轄区域によつて理解しながら、他方において、ほしいままにその地域を縮少しているのは不当である。(ロ)また明治座及び歌舞伎座は、審決当時すでに復旧工事が進行していたのであるから、これを右地域における競争者として考慮しなければならない。また劇場が映画館に転用され得ることは、さきに帝国劇場、東京劇場、有楽座の事例が示すところであるから、被告が明治座及び歌舞伎座を右地域における競争者中に算入しなかつたのは失当である。

(三)本件契約によつては競争の実質的制限は生じない。

(1) 私的独占禁止法第十六条によつて準用される第十五条第一項第二号には、単に、競争を実質的に制限することとなる場合と規定しているけれども、ここにいう競争の実質的制限とは、法第三条の根本精神に照して「不当なる」制限と解すべきで、競争の制限が「不当」であるためには、その制限によつて他の同業者又は一般需要者に不利不便を及ぼすものでなければならない。本件契約はこのような目的で締結されたものでもなく、結果においてもこのようなことにはならない。

(2) 本件契約は、原告とスバル興業との間の競争を消滅せしめたものではない。即ち(イ)本件契約によりスバル興業は、自主的経営権を奪われないのであるから、原告との間の競争は消滅しない。(ロ)スバル興業は、当時崩壊寸前ともいうべき状態で、本件契約による原告からの三千万円の融資がなかつたならば、スバル、オリオン両座を失つたであろう。その結果、右両座は、「キャバレー」となつたかも知れないのであるから、原告はすでに競争力を失なおうとしたスバル興業を救済し、右両座を映画館として存続せしめることとしたのであつて、結局スバル興業と原告との競争を消滅させずに保存したのである。

(3) 競争の制限が実質的であるとするためには、具体的事実即ち料金引上げを来すであろうとか、数本立を一本立にするであろうとかの事実を示さなければならないのに、被告はこれらを示さない。

(4) 原告が本件契約に基き、スバル、オリオン両座を支配し得るに至るとしても、それによる座席数の増加の割合は僅少であるから、それによる競争の制限は「実質的」ではない。仮に丸の内、有楽町界隈を一定の取引の分野と仮定すれば、すでに原告の支配下にある六劇場(日本劇場、日劇地下劇場、日比谷映画劇場、有楽座、帝国劇場、日劇小劇場)の総座席数は八、四五二個で丸の内、有楽町界隈十劇場一〇、七八七個対する七十七パーセント強で、スバル、オリオン両座を加えることによる座席数増加の割合は僅少である。更に、銀座地区を一定の取引分野とすると、被告はこの地域から、新橋演舞場、三越劇場、白木劇場、人形町松竹映画劇場の四劇場を除外し、また明治座、歌舞伎座については、全くこれを無視したため、原告支配の座席数の割合についての認定を誤つている。

(イ)明治座、歌舞伎座を除外した場合の右地域全劇場の座席数一九、八一二個に対し、原告支配座席数は、八、四五二個で四十二パーセント強となり、これにスバル、オリオン両座を含めれば九、七四二個で、四十九パーセントとなる。

(ロ)明治座、歌舞伎座を含めた場合の右地域全劇場の座席数は、二三、八六九個に対し、原告支配座席数は八、四五二個で、三十五パーセント、これにスバル、オリオン両座を含めれば四十パーセントとなる。

これによつて見れば、銀座地区においては、原告の支配座席数の割合が、総数において僅少であるばかりでなく、スバル、オリオン両座の支配により増加する割合も僅少である。

(ハ)仮に銀座地区における被告主張の四劇場を除いた座席数によつても、スバル、オリオン両座の支配により増加する原告の支配比率は、七・七パーセントに過ぎず、競争の実質的制限を来すとする証拠としては十分でない。

(5) 銀座地区内には、国内における映画界の最有力会社である松竹株式会社の直営する映画館及び劇場が多数存在する。有楽町にあるピカデリー劇場、築地木挽町界隈に存在する映画館及び劇場の全部は、すべて松竹株式会社の直営である。殊に有楽町におけるピカデリー劇場は、外国映画の「ロードショウ」劇場として著名であり、原告に対し絶大な競争力を持つているから、原告がスバル、オリオン両座の完全な支配権を握り得たとしても、銀座地区における競争を実質的に制限することは不可能である。

(6) 被告は、審決において「各映画興行館の施設の優劣品格等諸般の情況を考慮」して、競争の制限が実質的であるといつているけれども、(イ)スバル、オリオン両座は粗末な仮建築であつて、耐用年限は今後数年を出でないものであり、(ロ)スバル、オリオン両座が、外国映画の上映館として名声を博したのは、終戦後の一時的現象であつて、永続性がある訳ではない。ことに、右両座は日本国内における米国映画の一手配給機関である「セントラル・モーション・ピクチュア・エキスチェンジ」(以下「セントラル・エキスチェンジ」という)から、米国映画の配給を受けて「ロードショウ」をしてきたのであるが、その「セントラル・エキスチェンジ」は近く解散し、各外国映画会社がそれぞれの系統の映画館を持つことが予想されるのであるし、また審決当時すでにスバル興業と「セントラル・エキスチェンジ」との関係も良好でなくなつていたのであるから、右両座は従来の名声を維持することが困難な状況に立至つていたのである。(ハ)更に映画館の品格の構成要素には、上映映画の種類、性質が含まるべきであるが、被告はこれらに考慮を払つていない。スバル、オリオン両座の施設、品格に関する被告の認定は誤りであり、ひいてスバル、オリオン両座の支配をもつて、競争の実質的制限を来すとする被告の認定もまた誤りである。

(四)以上(一)ないし(三)に述べたように、被告が原審決の基礎として認定した営業の賃借、一定の取引分野、競争の実質的制限に関する事実は、すべてこれを立証する実質的証拠がなく、審決は取消されるべきものである。

第二被告の答弁。

被告は、主文同旨の判決を求め、原告の請求原因に対し、次のように述べた。

一、被告が原告主張のような審決をしたことは認める。

二、原告がその主張のような経過で、スバル興業を援助するため、本件契約を締結し、金三千万円を貸付けた事実は認める。しかし原告が本件契約を締結するに至つた動機の一は、原告がスバル座において欧洲映画を上映せしめることにあつた。

三、(一)原告の、本件契約は営業の賃借ではないとの主張について。

この点については、審決の証拠と題する部分に述べたように原告が「法第十六条による営業賃借届出書」を提出した事実と、本件契約の全趣旨から、これを営業の賃借に該当するものと認むべきであつて、原告の主張は失当である。

(二)原告の一定の取引分野に関する主張について。

(1)私的独占禁止法にいう「一定の取引分野」とは、取引の業種、配給の態様、観客の地理的分布によつて限界を劃された一つの独立した市場ないし、競争圏を指すものと解すべきであつて、かかる競争圏は、大小種々錯綜して存在し得るものである。これを映画興行の取引分野について例示するならば、特定の映画興行館の観客は、都内及びその近郊に渉つて広く散在することも考えられる。この場合には都内及びその近郊をもつて、一つの競争圏とみることもできる。しかし、その中においても、新宿、渋谷、浅草、銀座等の一つの盛り場に存する映画興行館は、それぞれその固有の観客群を有しているのであつて、これらの盛り場内の興行館は、右の観客群を対象とし、その内の個々の観客を争奪し合う点において、更に一個の競争圏を形成しているのである。被告は健全なる社会常識に基き、本件の丸の内、有楽町界隈をもつて、右の如き意味における一つの競争圏に該当するものと認定し、これを私的独占禁止法第十五条第一項第二号にいわゆる「一定の取引分野」と解したのである。

(2)外国映画と日本映画とが、異なる取引分野に属するという原告の主張を否認する。外国映画と日本映画との間には、競争関係が成立し得るのである。しかのみならず原告主張のような質による取引分野の把握は、映画配給に関する問題であつて、映画興行の取引分野に関する問題ではない。けだし「フリー・ブッキング」制の下においては、映画興行館と映画配給業者との継続的な関係は切断せられ、各映画興行館の上映映画の種類は必ずしも一定しないからである。(なお映画配給業者と映画館との間において、一定の期間連続して映画を供給し、映画館は、他の配給業者から映画の配給を受けず、また配給業者も他の映画館に供給しないという拘束を含んだ契約による映画配給方式を「ブロック・ブッキング」制といい、「フリー・ブッキング」制とはそのような拘束のない方式をいう。)

(3)被告が東京都興行組合銀座支部管轄区域から、新橋演舞場、三越劇場を除いたのは、映画の常設館と認め難いからであり、白木劇場及び人形町松竹映画劇場を除いたのは、銀座からの距離が余りに隔つているからであり、明治座、歌舞伎座を算入しなかつたのは、審決当時未完成であつたばかりでなく、将来映画興行を営むものとは、到底考えられないからである。

(三)原告の競争の実質的制限に関する主張について。

(イ)一体、私的独占禁止法にいう競争の「実質的制限」とは、競争の「実効性ある」制限と同一の意義に帰着し、有効な競争を期待することが殆んど不可能な状態を指すものと解する。ある企業が、一定の取引分野において、いかなる程度に事業を支配すれば、競争の実質的制限になるかは一般的に論断することは困難である。特に、何パーセントの支配をもつて、実質的制限と解すべきか、これを計数的に表現することは、殆んど不可能である。それは業種、市場の状況、競争の態様等、種々の事情を綜合して個々に具体的に判断すべき事項である。被告は、本審決において、本件取引分野における映画興行館の数の比率、定員数の比率、施設の優劣、品格等諸設の情況、ことにスバル座が全国興行館中、その施設、品格等の点において第一流であるという公知の事実をも考慮して、競争の実質的制限ありと認定したのである。なお、映画館の品格には、その構成要素として、上映映画の種類、性質等が含まれるものである。

(ロ)本件契約を客観的に観るときには、原告がスバル座及びオリオン座の経営につき、主導権を握るに至ることは、到底否定することができないのみならず、仮に原告とスバル興業が対等の地位に立つて、スバル、オリオン両座の共同経営を行う場合でも、右両座と原告経営の映画館との間の競争は、消滅することは疑を容れない。

(ハ)原告は、仮に本件契約が成立しなかつたとすれば、スバル興業は崩壊し、競争は消滅に帰したであろうとの前提に立つているように思われるが、この前提は誤つている。仮に原告が、本件契約を締結しなかつたとすれば、他の競争者が本件と同種の契約を締結したかも知れず、あるいは、スバル、オリオン両座を買取つたかも知れず、いずれにしてもスバル、オリオン両座が映画興行を継続したであろうことは、当然予想されるところである。

(ニ)原告は、本件契約成立以前において、丸の内、有楽町界隈ないしは銀座地区において、相当程度の映画館を支配しているのであるから、本件契約によつてスバル、オリオン両座に対する支配が加わるとしても、支配力の増加は僅少で、それによつては競争の実質的制限は起らないと主張しているが、事業者がなんらかの作為によつて、たとえ僅少でも、支配力を増加し、その結果、従前の支配を含めて全体として競争の制限が実質的と認められる場合には、その作為は排除せらるべきであるというのが、私的独占禁止法第十五条第一項第二号の法意である。これを本件の場合についていえば、契約によつて、原告の支配する座席定員数の増加により競争が制限される比率がたとえ僅少で、丸の内、有楽町界隈を一定の取引分野とするときは、約一一・九パーセント、銀座地区とすれば、約七・七パーセントの増加に過ぎないとしても、全体としての競争の制限が前者にあつては約九〇・四パーセント、後者の場合は約五七・九パーセントに達することは明かであるから、かかる場合には競争の実質的制限を生ずるものと見るべく、この支配力の増加は排除されなければならないのである。

(ホ)また「セントラル、エキスチェンジ」の解散は、将来の不確実な事実であり、その他の競争の実質的制限に関する原告の主張は理由がない。

第三証拠関係。

一、引用証拠

被告は、審決の基礎とした事実の証拠として、引用乙第一号証(劇場共同経営に関する契約案)、同第二号証(東京都興行組合規約)、同第三号証の一(東京都興行組合銀座支部名簿)、及び二(同支部内映画劇場所在分布図)、及び参考人山崎正雄、遠山不覊夫、初田敬、伊藤義、被審人代表者米本卯吉の各陳述を引用し、原告は右引用乙各号証の成立を認めた。

二、あたらしい証拠の申出

(一)原告は、あたらしい証拠の申出として、参考人三宅晴輝、小林勇吉、山崎正雄、井上清蔵、池田義信、山崎修一、井関種雄、初田敬、遠山不覊夫、金子操、神戸徳太郎、柏木一郎、椎名良一郎、一松定吉、永田雅一、寺本熊俊の取り調べを求め、その理由として、つぎのように述べた。

(イ)被告は、本件審判開始決定書においても、その後の審判手続においても、映画興行における一定の取引分野として、丸の内、有楽町界隈のみをとりあげ、銀座地区におよばなかつた。そのために、原告は、銀座地区は映画興行の一定の取引分野として狭きに失すること、および同地区における有力な競争者の有無についての主張立証をすることができなかつた。(ロ)また被告は、審判手続中には、競争を実質的に制限するや否やを判断するにあたつて、(い)映画館の施設、品格を考慮していたことを明かにしなかつたため、原告はこれについて攻撃防禦の方法をとることができなかつた。(ろ)原告は「セントラル・エキスチェンジ」の解散が予想されていたのにかかわらず、その後の業界の変動、ならびに、(は)劇場が映画館に転用され得ることについて、主張立証を為すことができなかつた。

以上の点は、被告が審判手続では問題としなかつたために、原告はこれらに関する証拠を提出することができなかつた。従つて、原告はこれについて過失がなかつたのである。

(二)被告は、これに対し、つぎのように述べた。いかなる範囲をもつて「一定の取引分野」と認むべきかの問題は、単なる事実問題ではなく、法律解釈の問題とみるべきものであるから、必ずしも審判開始決定の記載に拘束されることなく、審判に現われた資料に基き、自由に判断し得る事項である。しかのみならず、原告は審判手続において、映画興行の一定の取引分野としての銀座地区に言及し(原告の答弁書参照)、かつ自ら東京都興行組合銀座支部名簿(引用乙第二号証の一)を提出したのであるから、原告としては銀座地区が一定の取引分野と認定されることを予想しなければならなかつたのである。この点について、原告に主張立証の機会を与えなかつたという主張は、失当である。

理由

第一審決の事実認定について。

一、原告のスバル興業との契約は営業の賃借であるかどうかについて。

(一)審決の認定した事実によれば、本件契約によりスバル興業は、その所有にかかるスバル座及びオリオン座の共同経営権を原告に与え(第一条)、経営方針は原告とスバル興業と協議決定し(第四条)、原告は経営上必要とする経費を一切負担すると共に、毎月の興業収益の八割五分を取得し(第五条)、またスバル興業は、原告から金三千万円を、弁済期は五年後無利息と定めて借受け(第二条)、毎月興業収益の一割五分を取得する(第五条)のである。

(二)これらの事実によれば、原告はスバル、オリオン両座の経営に任じ、右両座に関するかぎり、スバル興業の営業の実権を収め、この対価として、スバル興業に金三千万円の融資と右両座の収益中毎月一割五分を与えるという関係であるから、これを営業の賃借の一態様とみることができる。もつとも、前記契約には「共同経営」なる語を用い、また経営方針は、原告とスバル興業と協議決定することとなつているけれども、経費の支弁方法、収益取得の割合等からみれば、原告が右営業の実権を収めているものと認定するに妨げない。

(三)以上の事実は、「劇場共同経営に関する契約案」(引用乙第一号証)自体によつてこれを認定することができる。かかる認定は、理性ある人が合理的に考えれば、結局到達するところのものである。従つて原告が、スバル興業から営業を賃借した事実は、これを立証するに足る実質的な証拠があるものといわなければならない。

二、原告の一定の取引分野に関する主張について。

(一)原告は、映画興行について地域の点から一定の取引分野を構想すべきものとすれば、丸の内、有楽町界隈または銀座地区ではなく、旧東京市内がほぼこれにあたると主張しているが、丸の内、有楽町界隈には、原告主張のような条件があるため、観客が都及び近郊一円より参集するという意味では、少くともここに参集する観客の一部は、この地域外の他の映画館と共通の対象となり、従つて旧東京市内の地域が一定の取引分野となり得る場合のあることは否定し得ないけれども、一般通常の状態においては、映画興行の取引分野としては旧東京市内より狭い地域について考えるのが相当である。すなわち、映画館の多数がある地域に近接して存在するときは、おのずからその地域に集合する観客群を生じ、これらの観客群は通常この地域内で、それぞれの映画館を選択して入場することとなり、この地域内の興行者は、この観客群を共通の対象とすることとなる。このように解すると、旧東京市内よりも狭い地域に映画興行の一定の取引の分野が成立するとみるべきであるから、この点に関する原告の主張は失当である。

(二)また原告は、映画興行の一定の取引分野は、地域によるよりも、質的に把握すべきもので、日本映画、外国映画のそれぞれの取引分野を観念すべきである、と主張している。なるほど、そのような映画の質による取引分野も考えられないことはないが、前に述べたように、多数の映画館が近接して存在するときは、その地域内では、外国映画と日本映画とを通ずる観客群を生じ、おのずからそこの一定の取引分野を形成するものとみるべきであるから、この点についても、原告の主張は失当である。

(三)次に原告は、仮に旧東京市内が一定の取引分野として広きに過ぎるとしても、少くとも、東京都興行組合銀座支部管轄区域全部を一定の取引分野と認むべきものであると主張している。

(1) これについて審決では先ず、丸の内、有楽町界隈が、映画興行の取引分野において、一つの地域を形成し、かつその対象とする一種の観客群ともいうべきものが存在していることは、一般社会通念に照し、これを認定するに十分であるといつている。しかし丸の内、有楽町界隈は東京都の中心繁華街である銀座方面に直ちに接続し、同方面にわたつて更に多数の映画館が相近接して存在しているのは、公知の事実であつて、この事実からみると、丸の内、有楽町界隈だけを切りはなして独立した地域とみることは相当でなく、被告がこれを一般社会通念に照らして、これを映画興行の一定の取引分野と認め得るとしたのは独断であるといわなければならない。

(2) 次に原告は、被告がさらに第二次的に銀座地区をもつて一定の取引分野と肯定しながら、このうちから新橋演舞場、白木劇場、三越劇場および人形町松竹映画劇場を除外したのは不当であり、また明治座及び歌舞伎座を除外したのは不当であると主張している。よつてこの点について考えるに、

(イ)銀座地区即ち東京都興行組合銀座支部管轄区域というのは、東京都の映画、演劇、演芸興行場経営者の結成している東京都興行組合の定めた十三支部の地域の一つで、新橋、日比谷、室町、築地を連らねる範囲の地域をいうのであることは、当事者間に争のないところである。

(ロ)右範囲の地域のなかでも、東京都の中心繁華街である銀座をはさんで、有楽町、築地を両翼とする地域は、各層の市民が群集する娯楽地域で、そこには各種の興行施設があり、映画興行の面においても、大きな観客群が生じていることは、ほとんど公知の事実でもあり、また参考人初田敬の陳述によつても明かなところである。

(ハ)ところで、三越劇場、白木劇場、人形町松竹映画劇場は、右に述べた銀座を中心とする娯楽地域から相当離れて孤立しており、ことに三越劇場については、東京都興行組合銀座支部結成のときこれまで入れるのは広過ぎないかとの説があつたとき同劇場の特別の要望でこれも銀座支部に加えたといういきさつがあることは、成立に争ない引用乙第三号証の二と参考人山崎正雄の陳述によつて認められるから、これらの三劇場は(ロ)にいう観客群とはおのずから関係を異にするとみるべきである。

(ニ)新橋演舞場はこれまでの事実からみて、現在直ちに映画館に転用されるようなことは予想することはできない。また明治座および歌舞伎座は、本件審決当時(昭和二十五年九月二十九日)復旧工事中であつたことは事実であるが、明治座については(ハ)の劇場と同様の関係にあると解すべきであり、歌舞伎座はその沿革からいつても、また、その施設からみても、演劇のための劇場であつて、仮に映画興行に使用されるというようなことがあつても、それは極めて例外の場合であると解すべきである。以上それぞれの事実は、いずれも当裁判所に顕著なところである。

(3) 以上説示したところに、引用乙第三号証の一および二を合わせ、映画興行の観点から考えると、銀座を中心として、京橋、日比谷、新橋、築地を連ねる一地域には、日本劇場、日劇地下劇場、日比谷映画劇場、スバル座、オリオン座、名画座、東劇地下劇場、中央劇場、銀座松竹劇場、築地映画劇場、銀座全線座、テアトル銀座、飛行館東横劇場、新橋メトロ劇場、ムービー銀座、ピカデリー劇場、有楽座、帝国劇場、日劇小劇場、東京劇場の二十の映画館が相近接して存在し、これらの各映画館はこの地域に集まる共通の観客群を対象としてそれぞれ興行していることを認めることができる。従つてこの地域について、映画興行の一定の取引分野が成立するとみるのが相当である。これと同趣旨にいでた審決の認定は、これを立証する実質的な証拠があるものといわなければならない。

三、原告の競争の実質的制限に関する主張について。

(一)原告は、私的独占禁止法第十六条によつて準用される同法第十五条第一項第二号にいう競争の実質的制限とは、「不当なる」制限でなければならないと主張しているが、法は、この場合、こういう関係において競争の実質的制限が生ずれば、これを不法としているのであつて、競争の実質的制限そのものについて、当不当を問題としてはいないのである。本来、法第二条第四項第三号の目的精神を深く考えれば、本件のような場合、即ち営業の賃借によつて、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合は、窮極において、不当な取引制限に進み、更に時あつて、私的独占の状態に至る性格を持つものと認め、これを禁止しているのであつて、いわば、それ自体すでに不当な取引制限に進む必至の軌道に在るものと解しているのである。従つて、本件における競争の実質的制限を、全く他の関連と切り離し、それ自体について当不当を区別して論ずるのは法の趣旨ではなく、原告の主張は採用する限りでない。

(二)原告は、また、本件契約は原告とスバル興業との間の競争を消滅せしめたものでないとし、その理由として(イ)スバル興業は、本件契約によつて自主的経営権を奪われていないこと、(ロ)原告が本件契約によつて、スバル興業に、金三千万円の融資をしたのは、スバル興業が崩壊寸前の状態にあつたのを救済したのであつて、もしこの救済がなかつたら、スバル、オリオン両座は、映画館以外の営業に転じ、原告との競争相手としての適格を失つたかも知れないので、本件契約は、却つて原告とスバル興業との競争を消滅させずに保存したのであるという趣旨を述べているが、(イ)本件契約の全趣旨を考察すれば、結局原告は、スバル、オリオン両座に関する限り、スバル興業の営業の実権を収めることとなるのであつて「共同経営」なる文言があるために、スバル興業が、自主的経営権を失わないような観があるけれども、事実としては、実権は原告に移ると解するのが相当であることは、すでに述べた通りである(理由第一の一参照)。(ロ)また原告が、スバル興業の経済的危機を救つて、映画興行以外の営業に転ずることを防止し、競争を保存したという主張は、スバル、オリオン両座が第三者の手中に帰して、同じく映画興行を継続する場合のあることを全く無視する独断であつて、首肯することを得ない。現に契約当時、スバル、オリオン両座は、映画館として興行中であつて、原告に対する競争者として十分な適格を持つていたのであるから、この点においても、本件契約は原告に対するこの競争力を消滅せしめたものと解すべきである。従つて原告のこの点に関する主張も理由がない。

(三)原告は、競争の制限が実質的であるためには、料金の引上げを来すであろうとか、数本立を一本立にするであろうとかいう、具体的事実を示さなければならないのに、審決にはこれを示していないと主張している。なるほど、原告の挙げている事例は、これによつて競争の制限が実質的であると認定する一資料たる場合があることは認められるけれども、法第十五条第一項第二号にいうところの競争の実質的制限(第二条第三項、第四項等についても同じである)とは、原告のいうような個々の行為そのものをいうのではなく、競争自体が減少して、特定の事業者または事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによつて、市場を支配することができる形態が現われているか、または少くとも現われようとする程度に至つている状態をいうのである。従つて競争者の減少、或は競争の目的物の減少(本件の場合でいえば映画数または映画の種類の減少等)、または競争行為の減少(本件の場合でいえば、広告宣伝の減少等)等は、必然に競争の制限を来すが、これらの個々の事実があれば、直ちに制限が実質的となるとはいえないのであるから、必ずしもこれらの個々の事実をことさらに示すにはおよばないのである。これら個々の事実を超えて、競争の減少が、さきに説明した程度態様に達しているかどうかを判断して、競争の制限が実質的であるか否かを定めるべきものである。原告の主張は理由ありとはいえない。

(四)原告は、更に本件契約によつて原告が、スバル、オリオン両座を支配し得るに至るとしても、それによる原告支配座席数の増加の割合は僅少であるから、それによる競争の制限は「実質的」ではないとし、数字を挙げてその理由を主張している(事実第一の三の(三)の(4) 参照)。原告は本件の一定の取引分野について、種々の場合をあげて論じているけれども、本件における一定の取引分野は、先に理由第一の二で説示したとおりであるから、その取引分野についてのみ判断する。右の一定の取引分野における全映画館二十館の総座席数は一六、八〇七個で、内原告支配映画館の座席数は、スバル、オリオン両座を除外すれば六館、計八、四五二個、スバル、オリオン両座を加えれば八館、計九、七四二個であること、従つて総座席数に対する原告支配映画館座席数の比率は、スバル、オリオン両座を除外した場合は約五〇・二パーセント、スバル、オリオン両座を加えた場合は約五七・九パーセントであることは、引用乙第三号証の一により認めることができる。原告がスバル、オリオン両座を支配することによつて増加する原告支配座席数の増加の割合は、約七・七パーセントで、比較的僅少であることは、原告主張のとおりであるけれども、これによつて原告がすでに得ている過半数の座席支配が更に強化されることは明かであり、審決はこの事実と、各映画興行館の施設の優劣、品格等諸般の情況を考慮して競争を実質的に制限するとしているのである。

よつて、進んで右諸般の情況について考察する。(イ)引用乙第三号証の一、二によれば、前記認定の一定の取引分野のなかでも、スバル、オリオン両座のある丸の内、有楽町界隈は、映画館が最も多数近接して存在する地域であつて、ことに、日比谷交叉点及び有楽町駅に近く、きわめて便利なところにあり、原告がこの両座を支配するときは、丸の内、有楽町界隈において、映画館中八館を支配することとなり、原告の支配座席数の比率は約九〇・四パーセントに達すること、(ロ)参考人山崎正雄の陳述によれば、都心の劇場で「ロードショウ」が何週間続いたという成績が全国にひびくところから、原告はスバル座で、フランス映画を主とし、イタリー、イギリス等欧洲映画の「ロードショウ」をするために、本件契約を締結したこと、(ハ)参考人遠山不覊夫の陳述によれば、スバル座が相当高い評価を受けている映画館であること、及び本件契約の当時、スバル興業の方では、原告が資金を貸与してくれた上は、スバル座を原告の取扱つている映画のいわゆる「ショウウィンドウ」に提供するという考えであつたこと、(ニ)被審人代表者米本卯吉の陳述によれば、スバル座は、外国映画で売込んだ映画館であり、原告はこれをフランス映画、イタリー映画等のいわゆる「ショウウィンドウ」とする目的で、本件契約を締結したことを、それぞれ認定することができる。

以上(イ)ないし(ニ)の認定事実と、原告のスバル、オリオン両座支配による前記一定の取引分野における原告の支配座席数とを合わせ考えると、原告が右両座を支配するに至るときは、前記一定の取引分野における原告の支配は、単にその数の上で過半数を占めるばかりでなく、その質においてはるかに重きを加え、原告単独の意思で、相当に上映映画をはじめ、各般の興行条件にわたり、これを左右できる地位を占め、更に右分野において映画興行につき、強度の支配力を持つ可能性を有するに至るものと認定することができる。従つて原告の本件賃借により、右一定の取引分野における競争が実質的に制限されるものというべきである。原告が単に支配座席数だけを根拠として、競争の実質的制限を認定する証拠が不十分であると主張するのは、理由がない。

(五)原告は、銀座地区内に松竹株式会社の直営映画館が多数存在することを理由として、原告が銀座地区における競争を実質的に制限することは不可能であると主張しているけれども、本件一定の取引分野における松竹株式会社経営の映画館中、原告経営の映画館と対抗できるようなものは、原告自身の認めているピカデリー劇場の外には、近時演劇劇場から転用された東京劇場を主たるものとするに過ぎないことは公知の事実というべく、これと前記(四)で認定した諸事実とを合わせ考えると、全体として原告支配の映画館は松竹株式会社経営の映画館に比し、その支配座席数においてはもとより、またその他の諸条件においても遥かに優越しており、松竹株式会社経営の映画館があるからといつて、前記認定のような原告の地位がゆるぐものとは考えられないから、原告の主張は理由がない。

(六)なお原告は、スバル、オリオン両座の施設、品格等に関し、次のような主張をしているから、これについても考察しておく。

(1) 先ず原告は、スバル、オリオン両座は粗末な仮建築で、耐用年限は今後数年を出でないと主張し、従つてその施設は優れたものではないとしているけれども、終戦後審決当時までの状況の下においては、前認定のように、所在場所、上映映画の種類その他の諸条件が加われば、右の程度の施設でも優秀な映画館と認定するに、なんら妨げとならないというべきである。

(2) 次に原告は、スバル、オリオン両座が外国映画上映館として名声を博したのは、終戦後の一時的現象でありかつ当時「セントラル・エキスチェンジ」との関係も良好でなくなつていたから、従来の名声を維持することは困難となつていた、と主張しているけれども、スバル座は 終戦後しばしば世間の人気に投じた映画を上映し、早くも有名となり、またオリオン座もその隣にある封切館で、当時両座とも相当評判を得た映画館であつたことは、公知の事実であるから、審決当時の状況において、右両座とも相当優位な映画館であつたというべく、従つて原告主張のような「セントラル・エキスチェンヂ」に関する事情があつても、被告の認定が誤りであるとはいえない。

(3) 原告は、映画館の品格の構成要素には、上映映画の種類、性質が含まれるべきところ、被告はこれを考慮しなかつたから、審決はこの点において認定を誤つたと主張しているけれども、映画館の品格をいうには、上映映画の種類、性質等を考えなければならないことは当然であつて、被告引用の証拠を総合すれば、被告がこれらを考慮したことは十分に了解することができる。スバル、オリオン両座の品格に関する被告の認定は相当であり、この点についても原告の主張は理由ありとはいえない。

(七)以上(一)ないし(六)で説示したように、本件契約によつて、前記認定の一定の取引分野における競争を、実質的に制限することとなるものとする被告の認定は、これを立証する実質的な証拠があるものというべきである。

第二あたらしい証拠について。

原告は、審判手続においては、(イ)銀座地区が一定の取引分野としてとりあげられなかつたこと、(ロ)競争を実質的に制限するかどうかを判断するにあたり、(い)映画館の施設、品格に触れなかつたこと、(ろ)「セントラル・エキスチェンジ」の解散が予想されていたのにかかわらず、その後の業界の変動について、審理されなかつたこと、(は)また劇場が映画館に転用され得ることについて審理されなかつたことを理由とし、法第八十一条第一項第二号により、あたらしい証拠の申出をしている。

しかし(イ)原告が審判手続において提出申出をした証拠のうち、被告が当裁判所で引用する引用乙第二号証、同第三号証の一、二、及び参考人初田敬、伊藤義について証拠調が行われたことによつて、銀座地区が一定の取引分野として審理の対象となつたことは明かであり、(ロ)の(い)映画館の施設、品格が、審判手続において、審理の対象となつたことは、被告引用の全証拠によつて明かであり、同(ろ)の「セントラル・エキスチェンヂ」のことは、理由第一の三の(六)の(2) に説示したとおり、特に取り調べる必要のないことであり、同(は)劇場の映画館転用の問題については、理由第一の二の(三)の(2) の(ニ)に説示したとおりであつて、いずれも、あたらしい証拠を取り調べる必要が認められないから、原告の申出を採用することができない。

第三法令の適用について。

以上のように、審決認定の事実は、実質的な証拠によつて、立証されているものと認められるから、審決がこれをもつて法第十六条第三号第十五条第一項第二号に該当するものとして、審決主文のとおり排除措置を命じたことは、法令に違反していないし、また、その適用につき独断または不当と認むべき点なく、審決は正当というべきである。

よつて審決の取消を求める原告の請求を棄却し、訴訟費用は敗訴の当事者たる原告の負担とし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 中島登喜治 裁判官 藤江忠二郎 裁判官 猪俣幸一 裁判官 浅沼武)

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